Microsoft 365 でワークフローを構築する際の3つの選択肢
ワークフローシステムは、ビジネスプロセスの自動化や効率化に役立つ重要なツールです。Microsoft 365 を導入している企業の情報システム部門の担当者だけでなく、プログラミングの知識があまりない方でも、標準機能を活用して簡単にワークフローを作成することができるものもあります。以下では、Teams、SharePoint、Power Automateなどの機能を使った、具体的な手順とそれぞれがどんな利用ケースに適しているのかを紹介します。
目次
Teamsを使ったワークフロー(承認機能)の作り方
Teamsは、チャット、オンライン会議、ファイル共有などができる、Microsoft 365 のコミュニケーションツールです。2023年12月時点、Microsoft 365 Business Basic / Standard / Premiumの各プランで標準提供されています。Teamsには、機能を拡張できる「承認」というアプリがあります。Teamsのウィンドウを開き、アプリより「承認」アプリを検索し、開くことで利用できます。
なお、「承認」アプリが表示されない場合は、管理センターで利用が制限されている可能性がありますので、組織の Microsoft 365 管理者に確認してみてください。
このアプリの特徴は、タスク名、承認依頼先、承認依頼内容や添付ファイルを入力するだけで、誰でも簡単に「承認要求」を開始できることです。

承認依頼
承認要求から、承認完了までの流れは以下のとおりです。- [承認依頼者]が、承認要求を作成し、送信
- [承認者]が、Teamsのアクティビティなどで通知を受信
- [承認者]が、承認アプリの画面から該当の承認要求を承認
- [承認依頼者]が、Teamsのアクティビティなどで通知を受信


このように、承認依頼者と承認者とのやり取りをTeams上で行える非常にシンプルなものです。承認経路を増やしたり、同時に複数の方へ承認依頼することはできますが、複雑な条件設定などはできません。
休暇申請など、申請時の項目がある程度決まったものなどについてはテンプレートを作成して共有することもできますので、Teamsを中心にコミュニケーションされているチームや組織であれば、導入も運用もしやすい「手軽なワークフロー」機能ではないでしょうか。
- Teamsが使える、Microsoft 365 Business Basic / Standard / Premium プランで利用できる
- 誰でも簡単に承認依頼を行え、履歴も確認できる
- Teamsを常に利用している組織では、Teamsの通知に気づきやすく承認を早く得られる可能性がある
- 休暇申請などの部内で完結する簡単な申請
- 会議の議事録の参加メンバーへの回覧・承認
Power Automate を使ったワークフローの作り方
2つ目に紹介するのは、Power Automateを使ったワークフローの作成です。多種多様な「条件(トリガー)」と「実行内容(アクション)」を組み合わせて、複雑な経路や通知を自動化することができるのが、Power Automateの特徴です。
メールの受信や、OneDriveへのファイルの作成などを条件にしたり、外部の電子契約サービスやオンラインストレージサービスへの連携もできるなど、非常に自由度の高いワークフローを構築することが可能です。

ただし、Power Automate は一定の知識と経験が必要なため、組織内に有識者を抱えなければいけないことがハードルになります。もちろん外部業者に委託して構築してもらうこともできますが、ワークフローの修正・改善のためのメンテナンスコストが発生します。
なお、やりたいことによって手順がかなり多岐にわたるため、本記事では設定方法を割愛します。
- 多様な「条件」と「実行内容」をローコードで設定することで、複雑な経路や通知を行うワークフローを設定することができる
- Power Automateの有識者が必要で、内製するには大きな学習コストが必要
- 全社の稟議申請フロー全般 から 部署単位の申請・承認 まで
Microsoft 365 と連携するサービスを使用したワークフローの作り方
3つ目の選択肢として、Microsoft 365 と連携できるサービスを使ってワークフローを構築する方法をご紹介します。
サードパーティー(マイクロソフト社以外のベンダー)が提供するワークフローシステムは、これまでに紹介したTeamsやPower Automateの選択肢と大きく異なり、複雑なフローを比較的簡単に設定できるものが多いという点が特徴です。Power Automateの場合、ローコードとはいえ経路、分岐、通知などの設定にかなりのパラメータを矛盾なく配置していく必要があり、一つの申請モデルを作るのにかなりの労力を要します。また、運用開始後にうまく動作しなかった際の復旧や原因調査が非常に大変であり、サポートを受けられないことが担当者への大きなプレッシャーとなり得ます。
一方で、外部のサービスでは、経路、分岐、通知などがより分かりやすくパーツ化されたりテンプレート化されているため、設定担当者の学習コストを大幅に削減できます。さらに、導入後のトラブルや相談に対してもメーカーから適切なサポートを受けられるため、前述のような運用上のプレッシャーを大きく軽減することが可能です。
また、Microsoft 365 の認証情報と自動で同期されるサービスの場合、管理者はワークフローシステム側でアカウントを追加・削除する手間が省け、社員の異動や退職時のメンテナンス負荷が減り、ミスもなくなります。利用者にとっても、それぞれのID・パスワードを管理する必要がないため、非常に安全性が確保されます。
ただし、Microsoft 365 とは別にコストが発生するため、費用が増える点がデメリットといえます。しかし、学習コストや運用後のトラブル工数を極力抑え、さまざまな申請をワークフローで早く効率化したい場合には、このようなクラウドワークフローシステムの利用をお勧めします。
Microsoft 365 と連携するワークフローの具体例:Gluegent Flow
このクラウドワークフローシステムの具体的な例として、Microsoft 365 とさまざまな連携ができる「Gluegent Flow」(グルージェントフロー)が挙げられます。Gluegent Flowは、これまでのクラウドワークフローシステムの特徴に加え、以下の6つのユニークな特長があります。
Microsoft 365 とのアカウント・認証連携
Gluegent Flow は、Microsoft 365 のアカウント情報や組織情報と自動で同期できるため、Microsoft 365 のアカウントだけをメンテナンスすればよく、管理の手間を軽減できます。Microsoft Entra ID(旧Azure AD)やExchange Onlineを利用している場合は、組織の情報も連携されるため、起案者に応じてその人の上長である承認者を自動で設定することも可能です。
Excel への自動データ出力
申請フォームに入力された情報を、1件ずつExcelに自動出力することが可能です。これにより、稟議書の管理台帳や備品の貸出状況、分析・報告用の元データを手間なく作成できます。
Teams のリソース管理
Microsoft Teams と連携し、チームサイトの追加や更新、削除などを自動化できるため、チームサイトの一元管理を実現しガバナンスを強化できます。
Power Automate と連携した自動処理
Power Automate と連携することで、Teams への承認依頼の通知や、SharePoint やOneDrive への添付ファイルの自動アップロード、Outlookカレンダーへの登録など、申請情報を共有するさまざまな自動処理が可能になります。
ローカル環境のデータをクラウド環境(Microsoft 365)へ橋渡し
お客様のローカル環境にある基幹システムなどからCSV形式で出力した情報を、Shrepoint 上の Excel に同期させることや、Gluegent Flow で承認されたデータを毎日CSVとしてダウンロードするなど、データの橋渡しが可能です。
導入後の充実したサポート体制
Gluegent Flowでは、以下の3つのサポートを提供しています。
1)初期設定のサポート
お客様とのミーティングを通じて、初期設定の方法や実現したい内容に対する提案など、早期に運用を開始するための伴走支援が受けられます。
2)製品サポートサイト(クラウドコンシェルジュ)の提供
初期設定や機能のよりよい活用方法などを、動画や画面キャプチャで解説したサイトが提供され、不明な点についてはメールでの問い合わせ窓口も回数制限なく利用できます。
3)ご利用者様向けの継続的なサポート
運用中に生じた疑問や利活用に関する相談に対し、カスタマーサクセスチームが追加費用なく問い合わせ対応やオンラインミーティングを実施します。また、新機能やよくある問い合わせを解説するレクチャー会の開催(月に1回程度)や、ユーザー企業の社内向け説明会の開催など、継続的なサポートが提供されます。
Gluegent Flowを導入するメリットは多岐にわたり、Teams、SharePoint、Power Automateなどでのワークフロー利用に課題を抱える組織にとって、Microsoft 365との連携が強みであるGluegent Flowは選択肢の1つとなるでしょう。
Microsoft × ワークフロー 3つの選択肢の比較
これまでに紹介した3つのワークフロー構築の選択肢を一覧にして比較します。
選択肢 | Teams 承認アプリ | Power Automate | クラウドワークフローシステム (Gluegent Flow) |
---|---|---|---|
利点 | ◎ シンプルで誰でも使いやすい | ○複雑な設定が可能 | ◎ 柔軟な設定が比較的簡単に可能 |
欠点 | ✕ 複雑な経路や条件分岐はできない | ✕ Power Automateの高い知識が必要 | ✕ Microsoft 365 とは別に費用が発生 |
想定ユースケース | 休暇・経費申請、会議の議事録回覧など、部内で完結する簡単な申請 | 全社の稟議申請フロー全般から部署単位の申請・承認まで | 全社の稟議申請フロー全般から部署単位の申請・承認まで |
チームや小さな組織で完結する簡単なワークフローであれば、まずはTeamsを試してみるのがいいかもしれません。特にTeamsを中心にコミュニケーションしている場合は、利用者が抵抗なく利用を開始できるでしょう。
一方で、全社の稟議規程にあるさまざまな申請に対応するような複雑なワークフローには、ある程度複雑な設定にも対応できるPower Automateかクラウドワークフローシステムが適しています。ワークフロー導入を推進する部門が、細かくメンテナンスできるメンバーがいればPower Automateを、細かなメンテナンスや複雑な設計や改善が難しいのであればクラウドワークフローシステムの導入を検討することをお勧めします。
Case Study
Microsoft 365 とGluegent Flowを活用し、紙の申請や稟議書を電子化された成功事例や、全面クラウド化によりDX推進された事例をご紹介します。