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医療DX令和ビジョン2030とは?主な取り組み内容やメリットを紹介

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電子カルテや遠隔治療など医療DXが推進されている中で、医療DX令和ビジョン2030のビジョンが公表されました。医療DX令和ビジョン2030では、各医療機関の連携を強化し、患者中心の医療提供をするなどDXによって実現するべき目標が定められています。

本記事では、医療DX令和ビジョン2030の概要や取り組みの詳細を解説します。また、医療DXによる患者側、医療提供側などのメリットについても紹介します。

 

医療DX令和ビジョン2030とは?主な取り組み内容やメリットを紹介
 目次

医療DXとは

医療DXとは、「デジタルトランスフォーメーション」の略であるDXを医療分野に適用した概念です。デジタル技術を利用して医療業務やサービスを革新し、業務の効率化と医療の質向上を同時に目指します。

例えば、紙のカルテをデジタル化した電子カルテが該当します。電子カルテにより医療情報の探し出しや共有が容易になり、診療の効率化が進みました。また、遠隔診療は地理的制約を超えた医療提供を可能にし、特に移動困難な患者のアクセス向上に貢献しています。

電子処方箋の導入やマイナ保険証の活用なども医療DXの取り組みの1つです。医療DXの取り組みは医療従事者の負担軽減と患者サービス向上の両立を実現します。

医療DX令和ビジョン2030とは

「医療DX令和ビジョン2030」は、日本の医療分野のデジタル化を総合的に推進するために2022年5月に提言された戦略ビジョンです。急速な高齢化や医療人材不足の課題に直面する日本の医療システムを、デジタル技術を活用して効率化することを目指しています。

医療情報の電子化と共有の促進により、医療機関間の連携を強化し、患者中心の医療提供を実現する青写真が示されました。また、遠隔医療や医療データの二次利用なども促進し、2030年までにデジタル医療国家となることを目標としています。

出典:自民党/「医療DX令和ビジョン2030」の実現に向けて

医療DX令和ビジョン2030推進の背景

医療DX令和ビジョン2030が推進された背景には、新型コロナウイルス感染症のパンデミックがあります。新型コロナウイルス感染症によって、日本の医療制度の紙ベースの記録管理や非効率な情報共有手段などの問題が浮き彫りになりました。

また、2040年に向けて生産年齢人口が急速に減少する中で、限られた医療人材で効率的な医療提供体制を構築する必要性が高まっています。医療現場のデジタル化の遅れは、患者の治療や投薬に関する情報を、医療機関と薬局との間で円滑に共有できない状況を生み出しかねません。

さらに、自治体が実施する健康診断や予防接種などの貴重な健康情報が十分に活用されていないことも課題の1つです。

医療DX令和ビジョン2030の3つの目標

医療DX令和ビジョン2030の3つの目標として次の内容が挙げられます。

  • 国民の健康増進
  • 医療機関の業務効率化
  • IT人材の有効活用

 それぞれの目標の中身を解説します。

国民の健康増進

医療DX令和ビジョン2030の国民の健康増進の目標は、効率的で質の高い医療サービス提供を通じて国民の健康維持・向上を目指すものです。患者自身が医療情報を活用できるようになることで、健康寿命のさらなる伸長が期待されています。

従来は、患者が自身の医療情報を入手するには、かかりつけ医療機関からの紹介状取得やカルテ開示請求が必要であり、情報へのアクセスに制約がありました。医療DXによってアクセス制約の障壁を取り除くことで、患者主体の健康管理を実現します。

医療機関の業務効率化  

医療DX令和ビジョン2030の重要目標の1つである医療機関の業務効率化は、最新のデジタルツールとプラットフォームを積極的に活用することで実現を目指すものです。電子カルテや医療情報システムの連携強化により、これまで手作業で行われていた多くの事務作業や情報管理業務を自動化・効率化します。

IT人材の有効活用

医療DX令和ビジョン2030の目標の1つであるIT人材の有効活用は、システム関連の専門人材を医療分野で効果的に活用し、医療システムの運用改善を推進するものです。医療のデジタル化により、SE人材をはじめとした技術者が活躍できる場が拡大します。 

IT人材の活用は医療の質向上だけでなく、IT産業の振興や専門人材の活用促進の側面も持ち合わせており、医療と産業の両面に良い影響をもたらす施策です。

医療DX令和ビジョン2030の主な取り組みは3つ

医療DX令和ビジョン2030の主な取り組みは次の3つです。

  • 全国医療情報プラットフォームの創設
  • 電子カルテ情報の標準化と全国への普及
  • 診療報酬改定DX

それぞれの内容を詳しく解説します。

全国医療情報プラットフォームの創設 

全国医療情報プラットフォームは、現在医療機関や介護施設などで個別に管理されている患者の医療情報を一元化し、効率的に利用できるようにするためのシステムです。患者が異なる医療機関を受診した際にも、過去の診療記録や検査結果、投薬歴などの重要な医療情報が適切に共有され、より適切な医療サービスの提供が可能です。

また、システムの特徴として、患者自身も自分の医療情報に直接アクセスできる権限が付与されることが挙げられます。患者は自身の健康状態や治療経過を把握しやすくなり、より主体的な健康管理が可能です。医療機関側にとっても、重複検査の回避や迅速な診断につながり、医療の質の向上と効率化の両立が期待されています。

電子カルテ情報共有サービス

電子カルテ情報共有サービスは、全国医療情報プラットフォームの中核をなすサービスです。さまざまな医療機関や薬局間で患者の電子カルテ情報の安全かつ効率的な共有を可能にするシステムです。これまで機関ごとに孤立していた患者情報が連携され、継続的で一貫性のある医療サービスの提供が実現します。

次の3つの主要機能から構成されています。

  • 文書送付サービス
  • 6情報閲覧サービス
  • 健診文書閲覧サービス

これらのサービスにより、医療機関間の情報連携が飛躍的に向上し、患者にとってはより質の高い継続的な医療が受けられます。 

電子処方箋管理サービス

電子処方箋管理サービスは、従来紙で発行されていた処方箋を電子化し、クラウド上で一元管理するシステムです。医療機関と薬局の間で処方情報がリアルタイムに共有され、処方から調剤までのプロセスが大幅に効率化されます。

患者の過去の処方歴を医療機関や薬局が相互に参照できることが特徴です。医師は患者が他の医療機関で処方された薬剤情報を確認した上で新たな処方を行えるため、薬剤の重複投与や相互作用による副作用のリスクを低減できます。薬剤師も同様に患者の処方歴を確認しながら調剤を行うことで、より安全な薬学的管理が可能です。

電子カルテ情報の標準化と全国への普及

医療DX令和ビジョン2030の取り組みの1つが、電子カルテ情報の標準化と全国規模での普及です。「HL7 FHIR」と呼ばれる規格を採用して電子カルテ情報の標準化を積極的に推進しています。

HL7 FHIRは、米国のHL7協会によって開発された医療情報交換のための次世代標準フレームワークであり、国際的にも広く採用されています。これまで医療機関ごとに異なる形式で管理されていた電子カルテ情報を共通の規格に統一することで、異なる医療機関間でのスムーズな情報交換の実現が可能です。

出典:厚生労働省/HL7 FHIRに関する調査研究の報告書

診療報酬改定DX

診療報酬改定DXは、医療機関の運営に影響を与える診療報酬システムの更新プロセスをデジタル化することで、医療機関やシステムベンダーの負担軽減を目指す取り組みです。従来、診療報酬改定の度に医療機関は大規模なシステム更新作業を強いられてきましたが、DX化により改定対応の効率化が期待されています。

取り組みの一環として、2024年度には医療機関で使用される各種システムの共通言語となる「マスタ」の整備が進められています。マスタは診療行為や医薬品などのコードを統一的に管理するもので、付加情報の1つ「電子点数表」の改善も計画されているのです。

医療DX令和ビジョン2030を推進するメリット

医療DX令和ビジョン2030を推進するメリットとして、関連するそれぞれの視点からのメリットを紹介します。

  • 国民視点のメリット
  • 医療関係者視点のメリット
  • システムベンダ視点のメリット

各視点のメリットを詳しく解説します。

国民視点のメリット

医療DX令和ビジョン2030が推進されることで、国民はAI医療などを駆使したより精度の高い診断や個別化された治療が受けられることになるでしょう。さらに、オンライン診療の普及によって、患者は非対面での診療を選択できるようになり、院内感染のリスクを回避しながら必要な医療を受けられるでしょう。

特に医師不足に悩む地方在住者にとっては、長時間の移動や通院の負担なく都市部の専門医による質の高い医療サービスを受けられるようになり、地域間の医療格差の解消にも貢献します。

医療関係者視点のメリット

医療DX令和ビジョン2030の推進は、医療関係者にとってもメリットをもたらします。電子カルテシステムの標準化と普及により、システム導入・運用コストが低減され、経営面での負担が軽減されるでしょう。また、紙カルテの管理や手書き入力などの煩雑な作業がなくなることで、医療スタッフの業務効率が向上します。

さらに、オンライン予約システムや自動精算システムの導入により受付・支払い業務が効率化され、限られた人的リソースでより多くの患者への対応が可能です。人件費の抑制と業務の効率化を同時に実現し、医療関係者が本来の医療サービス提供に集中できる環境が整います。

システムベンダ視点のメリット

医療DX令和ビジョン2030の推進は、医療システムベンダにとってのビジネスチャンスです。単なるシステム提供者を超えて、医療サービスの高度化と効率化を実現するパートナーとしての役割が強まり、より付加価値の高い競争が促進されます。

AIや遠隔医療など先端技術を活用した革新的なソリューション開発が活性化し、システムベンダは単なるシステム提供者ではなく、医療分野の構造改革を実現する重要な役割を担えます。

医療DX令和ビジョン2030推進にはセキュリティ対策が欠かせない

医療DX令和ビジョン2030を推進するにあたり、患者情報や医療データを守るための強固なセキュリティ対策の実装は最優先事項です。デジタル化によって医療情報の共有が進む一方で、セキュリティリスクも比例して高まるため、信頼性の高い医療環境を構築しなければなりません。
特に医療機関でセキュリティインシデントが発生した場合、病歴や検査結果、投薬情報など極めてセンシティブな個人情報が外部に流出する危険性があります。

さまざまな情報システムを利用するための認証を強化し適切な管理をすることで、不正アクセスや情報漏えいのリスクは減らすことができます。
認証を強化するIDaaS(クラウド型ID管理サービス)は、シングルサインオン(SSO)を活用して複数の医療システムやツールへのアクセスを簡素化し、スタッフの負担を軽減します。さらに、多要素認証やアクセス権限管理を活用することで、セキュリティ強化にも貢献します。
管理業務の自動化・効率化で、運用の負担も軽減し、医療機関のデジタル化を支援します。

もちろん、多層的なセキュリティ体制を構築することが不可欠ですが、医療向けのガイドラインでも今後必須となる2要素認証の適用を実現するIDaaSの導入についても検討されてはいかがでしょうか。

病院・医療機関の皆様へ 「3省2ガイドライン」への対応はお済ですか?

3省2ガイドラインでは、リスクを分析し、どのように対応するかの仕組みをつくり、記録を残すことが求められています。
システムやサービスを利用する際に ①利用者識別 ②アクセス管理 ③アクセス記録 のセキュリティー基礎が重要となり、中でも「①利用者識別」については、令和9(2027)年度時点で稼働していることが想定される医療情報システムには、原則として二要素認証を採用することが求められています。

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