SharePoint ワークフロー廃止【2】移行先はPower Automateで正解?情シスが判断すべき現実的な課題
SharePoint ワークフローの廃止が確定したことで、多くの組織が「後継はPower Automateで問題ないか」「他に検討すべき選択肢はないか」という判断を迫られています。Microsoftが推奨しているという理由だけで移行を決めてしまうと、運用開始後に想定外のコストや管理負荷が顕在化するケースも少なくありません。本記事では、Power Automate移行を前提に検討する際に情シスが必ず押さえるべき現実的な論点を整理します。
目次
MicrosoftがPower Automateを推奨する理由と前提
MicrosoftはSharePoint ワークフロー廃止後はPower Automateへの移行を推奨しています。その理由は、Microsoft 365全体と連携できる統合基盤であり、将来的な機能拡張もPower Automateに集約されているためです。ただし重要なのは、Microsoft公式の自動変換ツールは存在しないという点です。
また、補足として、SharePoint 2010 ワークフローは2020年に廃止済み、2013 ワークフローはSharePoint Onlineで非推奨となり、オンプレミスでも今後廃止が進む予定です。
移行をツール単体の話ではなく、廃止全体の流れの中で位置づけることが重要です。
▶SharePoint ワークフロー廃止から移行・代替までを俯瞰する解説
単純移行は難しい:Power Automate再構築における「設計差分」
SharePoint ワークフローからPower Automateへの移行は、単なるツールの乗り換えではなく、「業務フローの全体再設計」を意味します。自動変換ツールが存在しないため、すべてのフローをゼロから組み直す必要があります。
特に構築時の負担となる、SharePoint ワークフローとの決定的な違いは以下の3点です。
① 「1パッケージ」から「最小単位の積み上げ」へ
SharePoint ワークフローでは「承認プロセス」という一つの機能の中に、通知・期限切れ処理・ステータス変更などがパッケージ化されていました。Power Automateでは、これらをすべてバラバラのアクションとして配置し、線でつなぐ必要があります。
- 承認後の処理: 承認された後に「リストのステータスを更新する」「申請者にメールを送る」といった動作を、条件分岐(Yes/No)を使って一つずつ手作業で定義する必要があります。。
- 例外処理の作り込み: 「承認者が不在の場合」「差し戻しが発生した場合」といった例外的な動きも、すべてロジックとして明示的に組み立てる必要があり、SharePoint ワークフローに比べてステップ数が数倍に膨れ上がります。
② 組織階層や「役職」指定の難易度
SharePoint ワークフローではSharePointのユーザー情報を参照して比較的容易に設定できた「多段階の役職承認」が、Power Automateでは大きな難所となります。
- 標準機能の限界: 標準で取得できるのは「申請者の直属の上司」までです。
- 構築の負担: 「部長 ⇒ 本部長」といった階層を辿るには、Microsft Entra ID(Azure AD)から情報を抽出する複雑なクエリを書くか、別途「承認者マスターリスト」をSharePoint上に作成し、フロー内で毎回そのリストを参照(検索)するロジックを自作する必要があります。
③ 権限管理とステータス制御の自動化
「承認中だけアイテムの編集をロックする」といった、SharePoint ワークフローでは標準設定だった制御も、Power Automateでは高度な設定が求められます。
- アクセス権の操作: 特定のアクション(HTTPリクエスト等)を使用して、アイテム固有の権限を解除・再割り当てするフローを組み込む必要があります。
- ステータスの同期: リスト上の表示ステータスと、実際のフローの進行状況を同期させるための「更新アクション」を随所に配置せねばならず、設計ミスによる「画面と実態の乖離」が起きやすくなります。
運用フェーズで顕在化する3つの課題
Power Automateでの構築が完了しても、実際の運用が始まるとSharePoint ワークフロー時代にはなかった「3つの壁」に直面します。これらはSharePoint ワークフロー廃止の全体像記事でも触れた、情シス担当者が最も警戒すべきリスクです。
1. 実行制限
Power Automateには、1ユーザーまたは1フローあたりに設定された「アクションの実行回数制限(リクエスト制限)」が存在します。
- 懸念点: 全社規模で利用するフローや、1回の申請で多くのアクション(条件分岐やループ、他サービス連携)を消費する設計の場合、月の途中で制限に達し、承認フローが突然停止するリスクがあります。
- SharePointワークフローとの違い: サーバー負荷を気にせず実行できていたSharePointワークフロー時代とは異なり、常に「実行リソースの残量」を意識した設計と監視が求められます。
2. ライセンス
「標準機能でできる範囲」を超えた瞬間に、コスト構造が大きく変わります。
- 懸念点: Microsoft 365の標準ライセンスの範囲外となる「Premiumコネクタ」を利用する場合、別途Power Automateの有償ライセンスが必要になります。
- コストの膨張: 組織変更等で特定の機能が必要になった際、一部の管理者だけでなく、フローを利用する全ユーザー分(あるいはフロー単位)の追加課金が発生するケースがあり、予算計画を狂わせる要因となります。
3. 保守運用の負荷
「作って終わり」にならないのがPower Automateの難点です。特に組織変更時のメンテナンスは、SPW以上に情シスの工数を奪います。
- 設定の属人化: フローの接続(コネクション)が作成個人のアカウントに紐付いてしまい、作成者の退職や異動に伴ってフローが動かなくなる「所有権問題」が頻発します。
- メンテナンスの複雑性: 承認ルートをフロー内に直接書き込んでいる場合、人事異動のたびに複雑なフロー図を読み解き、一箇所ずつ手作業で修正しなければなりません。この「保守運用の負荷」に耐えきれず、結局、専用製品への切り替えを再検討する企業が少なくありません。
これらの課題が自社に当てはまるかは、全体構造を見て判断する必要があります。
▶SharePoint ワークフロー廃止の全体像と判断ポイントを整理する
Power Automateが向いているケース、向かないケース
小規模で個人利用に近い自動化や、通知・簡易承認レベルであればPower Automateは有効な選択肢です。一方で、全社利用の稟議フローや承認人数が多い業務、長期運用を前提とした業務プロセスでは、「作れるかどうか」ではなく「運用し続けられるかどうか」を判断軸にすることが重要です。
移行の次に考えるべき「代替」という選択肢
Power Automateだけに選択肢を絞るのではなく、Microsoft 365と連携しつつ、運用管理や承認制御をツール側で担えるワークフロー製品を検討する考え方もあります。情シスがすべてを作り込み続けるのではなく、現場と役割分担できる仕組みを選ぶことで、廃止対応が中長期的な業務改善につながるケースも少なくありません。SharePoint ワークフロー廃止から移行・代替までの全体像を整理した解説は、SharePoint ワークフロー廃止の全体像と次に検討すべきフェーズを整理する記事で確認できます。
移行先を決める前に、他の選択肢も含めて整理しておくと後戻りを防げます。
▶SharePoint ワークフロー廃止から移行・代替までの全体像を整理する
まとめ
Power AutomateはSharePoint ワークフロー廃止後の有力な選択肢ですが、すべての組織にとって最適解とは限りません。移行作業の難易度だけでなく、運用負荷や管理体制まで含めて判断することが重要です。廃止をきっかけに、単なる置き換えではなく業務フロー全体を見直す視点が求められます。


