内部統制を強化し、経営リスクを防ぐ
承認プロセスを最適化するロードマップ

  • 仕組み化
  • 内部統制
  • 可視化

企業が健全に成長していくため、またコンプライアンスをしっかり守っていく上で、承認プロセスは経営の土台となる大切な要素です。このプロセスがはっきりしないままだと、業務が滞ってしまうだけでなく、内部統制の面で大きなリスクにつながりかねません。

この記事では、承認プロセスをただの書類のやりとりとしてではなく、リスク管理と意思決定を支える基盤として捉え、プロセスの明確化からシステムを使った統制の強化まで、具体的な最適化の進め方(ロードマップ)を解説していきます。特に、不正を未然に防ぎ、監査にも対応できる承認証跡をきちんと確保するための具体的な方法に焦点を当ててご紹介します。

内部統制を強化し、経営リスクを防ぐ
 目次

承認プロセスが組織に与える影響:業務の効率化と内部統制

承認プロセスが複雑になったり、滞ったりする原因

承認プロセスは、組織の中での意思決定において、誰に権限があり、誰に責任があるのかを明確にする大切な役割を果たしています。

しかし、プロセスが紙の文書や特定の担当者に頼りすぎて、承認ルートが複雑になってしまうと、業務が滞り、必要な統制機能が失われてしまいます。特に、紙やメールだけで運用している場合、決裁が遅れてしまうことや、プロセス全体が不透明になってしまうことが起こりがちです。

コンプライアンス上の大きなリスク:「職務の分掌」に基づいた自己承認の構造的な排除

内部統制の観点から見て、自己承認ができてしまう状態は、絶対に避ける必要があります。自己承認は不正の温床となり、内部統制における「職務の分掌」(Separation of Duties)という基本原則を破ることになります。

職務の分掌とは、業務の実行、承認、記録といった大切な職務を一人に集中させず、複数人で分担させることで、意図的な不正やミスを防ぐためのルールです。承認プロセスを明確に定義し、システムで強制的に守ることで、権限からの逸脱を構造的に防ぎ、不正のリスクを排除することが重要になります。

内部統制を強化するための「承認プロセス」設計手順

より強固な内部統制を確立するためには、プロセスをシステム化するよりも前に、まず明確なルールを設計することが必要です。

ステップ1:稟議規程を基にした現行プロセスの可視化と権限の整理

すべての承認業務について、現状のプロセスを細かく可視化していきます。

特に、稟議規程は単なる手続きのマニュアルではなく、内部統制のルールそのものであり、プロセスの根拠となります。どの段階で誰がどのような権限(決裁権限)を持っているかを稟議規程に基づき正確に整理し、現状のプロセスとのズレがないかを確認します。このとき、承認ルートの曖昧な点や、特定の個人に依存しているポイントを見つけ出しましょう。

ステップ2:承認プロセスにおける「合議」と「承認ルート」をはっきり定義する

合議(複数の人が同時に承認する)や、条件によって承認者が変わる承認ルート(並列承認、代理承認など)のルールを詳しく定義します。特に、業務の性質上、複数の部門の承認が必要な場合や、不正リスクが高い取引については、必ず複数のチェックが入る仕組み(職務の分掌)を組み込みます。

ステップ3:監査対応を見据えた証跡(エビデンス)の記録要件を定義する

承認プロセスを通ったすべての申請について、承認証跡(監査証跡)として、何を、いつ、誰が記録すべきかを定義します。これは、後のデジタル監査(監査 効率化)や業務監査において、プロセスの透明性と妥当性を証明するために、欠かせない作業です。

システムによる内部統制の確立:承認証跡の管理と監査の効率アップ

承認プロセスをシステムに組み込むことで、手作業では難しかった厳格な統制と高い効率性を同時に手に入れることができます。

構造的な不正を防ぎ、厳格な権限管理を実現する

承認プロセス管理システムは、あらかじめ定義されたルール(稟議規程)に基づき、承認ルートを自動で固定化します。これにより、担当者が勝手に承認ルートを変えてしまったり、権限のない人が承認してしまったりするリスク(自己承認)を防げます。職務の分掌の原則に基づいた権限管理がシステム上で実現されるため、人為的なミスや意図的な不正を防ぐことができます。

監査対応の負担を大きく減らす「承認証跡」の自動記録

システム上で処理された申請や承認のデータは、すべて履歴(ログ)として自動で記録・保存されます。このデジタルな承認証跡は、「いつ、誰が、どのようなデータに基づいて、何のアクション(承認/否認/差し戻し)を行ったか」を時系列で追跡できるようにしてくれます。

これにより、内部監査や外部監査が必要になったとき、監査人が求める証跡をすぐに抽出・提示できるようになります。監査対応のための準備にかかる手間(紙の検索、突合作業など)が劇的に削減され、結果として監査の効率化が実現します。

プロセス改善とリスク低減への貢献

システムに蓄積された承認プロセスに関するデータ(例:特定の承認者で決裁が滞っている時間など)を分析することで、業務のボトルネックとなっている部分を見つけ出し、プロセス自体の継続的な改善(フロー改善)に役立てることができます。これは、ただ効率を良くするだけでなく、業務の滞りによる潜在的なリスクを減らすことにもつながります。

まとめ:しっかり統制された承認プロセスが企業の信頼を築く

承認プロセスを最適化することは、業務を効率化し、スピードを上げるだけでなく、内部統制コンプライアンス体制を確立し、企業の信頼性を守る上で最も重要な方法です。システムを活用してプロセスを厳格に管理し、不正のない透明な承認証跡を確保することで、企業はリスクを回避し、持続的な成長を実現するための強固な土台を築くことができます。