SharePoint ワークフロー自社構築の危険性
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技術力のある情報システム部こそ、自社構築を避けるべき
このページをご覧になる方の多くは、Microsoft365環境を活かし、SharePointワークフローやPower Automateを用いてワークフローを自社構築しようと検討されていることでしょう。Microsoft 365の標準機能で構築すれば、初期投資がかからず、スモールスタートできるのは事実です。しかし、この選択は初期費のみに着目しており、運用や構築工数などのトータルコスト(TCO:Total Cost of Ownership)、およびリスクという視点が欠けており、リスキーな選択です。
本記事では、SharePointワークフローおよびPower Automateによる自社構築が企業にもたらす具体的な危険性と、それによって発生する隠れた将来コストを解説します。
隠れた運用コストと属人化リスク
技術的負債と運用リスクの増大:保守工数の予測不能
承認条件が複雑だったり関係者が多くなると、フローの構造も複雑化します。SharePointリストをトリガーとする一つの申請フローに、条件分岐、データ操作、システム間連携が数百ステップに及ぶケースも珍しくありません。
【論点:複雑なフローが引き起こす問題】
原因特定に時間と工数がかかる: エラー発生時、Power AutomateとSharePointを組み合わせたワークフローでは、原因がPower Automate側にあるのか、SharePointリスト側にあるのかの原因切り分けや原因特定に手間と時間を要します。この切り分け工数こそが、運用における大きなリスクであり、隠れたコストです。- 変更影響範囲の管理: 業務ルールやプロセスの変更の度に、関連する複数のフローを手動で変更する必要があります。フロー毎の依存関係をすべて把握、管理を徹底できていれば良いですが、影響範囲を徹底管理できていない場合は、影響範囲の調査や挙動テストに多くの工数を費やすリスクがあります。
- バージョンアップ対応: Microsoft 365の仕様やAPIが更新された際、自社構築したフローが予期せず動作しなくなるリスクがあります。社内稟議など全従業員が利用するワークフローであればあるほど、緊急対応する工数とコストがかかります。
この「予期せぬ保守工数」を考慮すると、年間のトータルコストは、専門のワークフローシステムを導入した場合の年間利用費を容易に上回るのではないでしょうか。
深刻な属人化と事業継続リスク
自社構築したシステムは、開発や運用に携わった特定の担当者による属人化を招きやすい性質を持っています。
【論点:属人化がもたらす事業継続リスク】
ブラックボックス化: SharePoint ワークフローは、作成者独自のロジックや命名規則に基づいて構築されがちです。専用のワークフローシステムのように仕様や制約がないため、作成者以外がフローの全体に対する大きな変更を加えることが困難です。- 事業継続リスク: ワークフローの作成者が異動・退職した場合、暗黙知を引継げず、メンテナンス不可能な状態に陥るリスクがあります。社内稟議という企業の根幹をなす業務プロセスが、個人に依存している状態は、事業継続計画(BCP)の観点から見ると、重大なリスクと言えます。
専用のワークフローシステムであれば、ベンダーが継続的に技術情報を提供し、サービスとして保守が担保されるため、属人化リスクは発生しないでしょう。
Power Platformの落とし穴
Power Automateは無償で使えるように見えますが、大規模な利用では必ず「隠れたコスト」が発生します。
| ライセンス |
1ユーザーあたりの1日あたりのAPIリクエスト上限(例) |
|
Microsoft 365標準付帯 |
6,000回 |
| Power Automate Premium |
50,000回 |
制限を超過した場合:
- サービスの停止: フローの実行が遅延または停止します。
- 突発的なコスト: 制限を回避するためには、追加容量アドオンまたはPower Automate Premiumライセンスを、全ユーザーまたは対象フローに適用する必要が生じます。
皮肉にも、自社構築したワークフローが多くの従業員に使われれば使われるほど、ライセンス上の事実として追加コストの危険性が確定しています。一方、専用のワークフローシステムの場合、この実行回数制限はサービス契約に含まれており、予測しやすいコストとして扱えます。
専門ワークフローシステムの優位点
ここでは、当社のクラウドワークフロー「グルージェントフロー」を例に、専門ワークフローシステムの優位点を紹介します。
【1】 監査対応を考慮するなら、専門ワークフロー一択。
グルージェントフローは、いつ、誰が、何を承認したかという正式な記録を永続的に残すことを想定して開発し提供されています。
- 証跡保管、改ざんリスクの排除:「いつ、だれが、何をした」という申請から承認・決裁までの稟議データおよび操作ログは、システム管理者であっても編集できない仕様となっており、改ざん防止の仕組みが組み込まれています。
- 検索性の担保: 監査時には、特定の申請を抽出し証跡を提出必要あります。稟議の稟議番号はもちろん、件名、期間、申請者や承認者の氏名、本文や添付ファイルのテキストなどを検索対象とすることで、数年間にわたる膨大な稟議データから、迅速に該当証跡を抽出することができます。
【2】従業員の利用が定着する、操作感。
グルージェントフローは、左に承認経路、右に申請フォームで画面構成されており、WEBを操作できる人なら誰でもかんたんに操作できます。
- 統一感のある操作性:申請者や承認者は上からの項目に沿って記入や選択を行い、最後にボタン(申請、承認、差し戻し)を押すだけ。直感的な操作で申請や承認を行えます。
- モバイル対応: スマートフォンやタブレットを用い、外出先や現場からの申請・承認することを前提にモバイルアプリを標準提供しています。スマートフォンで撮影した写真も、クリック1つで添付できます。
【3】外部環境変化に、適切に対応。
外部環境は刻刻と変化します。法改正(例:インボイス制度、電子帳簿保存法など)やセキュリティ上の脅威、Microsoft365の仕様変更など。グルージェントフローは、システムを継続的にアップデートし適宜対応しています。また、最新のIT技術を積極的に取り入れ、追加機能をリリース。一例としては、生成AIを用いたユーザーアシスト機能などがあります。
結論:SharePointとPowerAutomateによる自社構築は、高リスクな負債を抱える
みなさんは、「隠れたコスト」「属人化リスク」という高リスクな負債をどう捉えますか?将来を見据えたトータルコストを重要視するなら、初期投資の低さではなく、リスクが少なく、継続的に安定した運用が可能なシステムを選定することが大切です。専用のワークフローシステムの重視すべき選定ポイントは?など、続きは、企業毎に異なる点もありますので、直接ご案内します。ぜひ、お問合せください。