SharePointで承認ワークフローを自社構築する方法と運用負荷のリアル

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SharePointで承認ワークフローを自社構築する方法と運用負荷のリアル
 目次

メール・Excelの限界。繰り返される不備や記入漏れ

申請・承認業務は、今のMicrosoft 365環境でどこまで効率化できるでしょうか。
紙の申請書をスキャンしてメール添付したり、TeamsやSlackのコメントで「承認しました」などとやりとりされていませんか?このような運用は入力ミスや進捗のブラックボックス化を招きやすく、業務の停滞を生む要因となります。
これらを解決する手段として、Microsoft 365を活用したワークフローの自社構築が考えられます。しかし、構築が可能であることと、安定して運用し続けられることは別問題です。

本記事では、Microsoftが推奨するSharePointとPower Automateを組み合わせた具体的な構築手順を解説するとともに、実務担当者が直面する「運用負荷のリアル」と、それを乗り越えて本来の目的である業務効率化を確実に達成するための考え方をお伝えします。

SharePoint ワークフローの変遷と、自社構築(Power Automate移行)の現状

これまで、SharePoint上で業務フローを自動化する手段として「SharePoint ワークフロー(2010/2013)」が広く利用されてきました。しかし現在、その運用は大きな転換期を迎えています。

標準機能としての「SharePoint ワークフロー」は廃止へ
Microsoftより、SharePoint 2010/2013 形式のワークフロー機能は完全廃止されることが発表されています。サポート終了後は既存のフローが動作しなくなるため、現在利用している企業は早急な対応を迫られています。

関連記事: 【2026年最新】SharePoint ワークフロー廃止のスケジュールと影響範囲のまとめ

次セクションでは、実際にSharePointリストとPower Automateを連携させた、具体的な構築ステップを見ていきましょう。

実践:SharePointリストとPower Automate連携による承認ルートの設計

自社構築では、データベースとなる「リスト」の設計と、自動化を担う「フロー」の構築を適切に組み合わせることが重要です。

  1. 申請フォーム(SharePointリスト)の設計:
    • リストの役割: Excelの入力フォームの代わりとなるもので、各申請書に必要な項目(タイトル、申請者、日付、金額、添付ファイル、プルダウン選択肢など)を列として定義します。

    • キーとなる列:
        • 申請ステータス: 「申請中」「承認済み」「差し戻し」「却下」などの選択肢を設定します。この列の値の変化をユーザーは確認し、Power Automateはこの値に基づいて次のアクションを決定します。
        • 承認ルート判定要素: 申請金額、部署名、申請種別など、承認ルートを分岐させるためのキーとなる列を明確に設けます。

        • ユーザー列(承認者): 次の承認者を格納する「ユーザーまたはグループ」型の列を設定します。これにより、フロー内でユーザー情報を動的に参照できます。

  2. 承認フロー(Power Automate)の構築と制御:
    • トリガー設定: 「SharePointリストにアイテムが作成されたとき」または「アイテムが変更されたとき」をトリガーにします。稟議開始時は「作成」を、差し戻し後の再申請は「変更」を使います。

    • 承認アクション: 「承認を開始して待機」アクションを挿入し、承認者にTeams通知またはOutlookメール通知を送ります。

    • 動的な承認者設定: 「アクション」ステップで、SharePointリストの「申請者」情報から「申請者の直属の上司」を自動で取得するアクションを組み込み、次の承認者として設定できます。これにより、人事異動があってもフロー自体を修正する必要がなくなります。

    • 条件分岐(Switch/Condition): リストの「申請金額」列を参照し、「50万円超なら部長承認」「100万円超なら役員承認」といった多段階の分岐を構築します。この分岐設定こそが、フローのメンテナンス負荷に直結するため、シンプルに保つ努力が必要です。

  3. フローの終了と通知:
    • 承認者が「承認」した場合、リストのステータスを「承認済み」に変更します。

    • 承認者が「差し戻し」を選択した場合、リストのステータスを「差し戻し」に変更し、申請者に具体的な修正依頼内容をメールで通知する設定を組み込みます。この「差し戻し」処理の組み込みが、自作フローの最大の難所の一つです。

【実務担当者の視点】SharePointワークフロー構築で押さえるべき重要ポイント

自社構築は「全てを自分でやらなければならない」という現実があります。特に、ITの専門部署がない企業では以下の「運用・保守の壁」は現実的な課題として立ちはだかります。

ハマる前に知っておきたい!自作ワークフロー特有の「保守・運用」の壁

運用フェーズでは、当然、自社構築したワークフローを社内で管理・運用し続ける必要があります。具体的にどのような「壁」に直面するのかを明確にしておきましょう。

1. 編集・変更の手作業

    • 人事異動への対応: Power Automateのフロー内の承認者設定を個人名など、特に静的に指定している場合、組織変更や人事異動が発生するたびに全て手作業で修正する必要があります。この修正作業は、フローが多岐にわたるほど膨大な作業負荷となり、ミスが発生しやすくなります。

    • 設定の変更・見直し: 「この部署だけルートを変えたい」「金額と申請内容を合わせた分岐を作ってほしい」といった細かな業務変更や追加の要望に、分岐したフローのどの部分を編集・変更すべきか、フロー図を読み解く時間が発生します。

2. ライセンスと実行制限の壁:

    • 実行頻度の制限: Power Automateの標準ライセンス(M365に含まれるもの)には、フローの実行回数や実行時間に制限があります。申請数が増大したり、フローが長時間実行されたりすると、制限に引っかかり、ワークフロー全体が停止するリスクがあります。上位ライセンス(Power Automate Premiumなど)への切り替えが必要になる可能性も考慮しなければなりません。

    • エラーの発生と原因特定: SharePointリストの列名が変更された場合等、フローは即座にエラーで停止します。このエラー通知はしばしば抽象的で「このフローのどのステップで」「なぜ」止まったのかを、エラーログを読み解いて自力で特定・修正する面倒な作業が求められます。

3. ガバナンスと運用体制:

    • アクセス権管理の負荷: 社内稟議のデータ(リストやライブラリ)は、部門や役職によって閲覧・編集権限を厳密に分ける必要があります。しかし、SharePointの権限管理は複雑で誤設定しやすいのが実情です。この「誰が、どこまで見られるか」の管理をSharePointで徹底するのは、非常に管理負荷が高いと言えるでしょう。

    • 柔軟な運用体制: 予期せぬ不具合が発生した場合、暫定処理で動かしたり、前のバージョン戻せる運用体制を整えておく必要があります。

ユーザー教育とガバナンス:システム化後に担当者が担う地味だが重要な業務

システムが完成した後も、「地味だが重要な」業務が残ります。

  1. 問い合わせ対応とマニュアル作成:
      • ユーザーからの「申請方法がわからない」「承認が来ない」といった問い合わせに応えるヘルプデスク業務を担います。社内FAQやマニュアルの作成と更新も必須です。

  2. アクセス権管理とセキュリティ:
      • 誰がどの申請書を作成・閲覧・承認できるかというアクセス権の管理は、セキュリティを担保する上で極めて重要です。この管理が不徹底だと、情報漏洩のリスクにもつながります。

稟議・申請業務の「プロ」に任せるという選択肢

自社構築はコストを抑える有効な手段です。しかし、上記の「運用負荷」を考慮すると、社内稟議システムを「作る」ことに時間を費やすのではなく、「社内稟議システムを用い、どのように業務効率化を実現させるのか」に時間を割くべきでしょう。

長期的な運用・拡張性・法令対応を考えるなら専用ワークフローがベストな理由

  1. 手厚いサポートと安定性:
      • 専用ワークフローは、システム障害やエラー発生時、ベンダーの専門チームが迅速に対応します。また設定の編集や変更時に分からない所は、製品サポートへ問合せることができ安心です。

      • Microsoft 365の仕様変更に追従する負荷もなく、システムの安定性が担保されます。

  2. 日本の商習慣に合わせた機能:
      • 専用ワークフローの多くは、日本の複雑な「ハンコ文化」「合議・並列承認」「根回し」などの商習慣に特化した機能を標準搭載しています。Power Automateでは複雑なロジックを組む必要があった機能が、クリックで設定できます。

      • テンプレートが豊富なため、すぐに利用を開始できます。

  3. 内部統制・法令対応の強化:
      • 操作ログ(いつ、誰が、何をしたか)の記録電子帳簿保存法など、法令対応を念頭に置いた設計になっています。また、検索機能が搭載されており、監査対応時に役立ちます。

  4. 属人化の回避:
      • 操作や管理が標準化されているため、担当変更が起きても、引継ぎが容易です。特定個人のPower Automateの知識に依存するリスクがなくなります。

稟議・社内手続きのシステム化の目的は、「業務の効率化」です。その目的を最も安定的かつ確実に達成するために、専用ワークフローサービスの導入を検討してはいかがでしょうか?

ワークフローシステム「グルージェントフロー」による成功事例

当社が提供するワークフローシステム「グルージェントフロー(Gluegent Flow)」を活用し、社内稟議を電子化したり、業務効率化を成し遂げられた事例をご紹介します。どのケースも、Microsoft 365環境で「業務の効率化」を目指し、自社でどのような設定をすれば業務や業務プロセスを円滑化できるのかを追求し実現されています。ぜひ、インタビュー記事をご覧ください。

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