電子帳簿保存法改正で必要な対応は?
ツール導入!のその前に(解説)

2022年1月1日に改正電子帳簿保存法が施行され、電子取引を実施する場合は2023年12月までに電子帳簿保存法へ対応することが必要となりました。本件に関して、電子帳簿保存法対応のシステムをお探しの企業様からお問い合わせをいただく機会が増えています。
今回は、電子帳簿保存法対応のシステムやツールを導入する前に知っておきたい内容について、解説します。

記載されている内容は現時点における情報であり、最新の情報は国税庁のホームページでご確認ください。また電子帳簿保存法の要件を満たすことを保証するものではありません。あくまでも参考情報としてご確認ください。実際の運用につきましては、担当の税理士や所轄の国税局にご確認ください。
(2022年4月20日時点)

電子帳簿保存法とは?

電子帳簿保存法とは、e-文書法(「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」と「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の2法の総称)のひとつです。
e-文書法の施行について

e-文書法は2005年にパソコンやインターネットの普及やそれらを活用した業務効率化やコスト削減を背景のひとつとして制定され、何度も改正が行われています。e-文書法と電子帳簿保存法は対象範囲が異なり、e-文書法は、電子帳簿保存法の上位に位置する法律です。

電子帳簿保存法の対象

電子帳簿保存法が対象とするのは、国税関係帳簿・国税関係書類・電子取引に限定されています。

電子帳簿保存法の対象 電子帳簿保存法の対象

電子帳簿保存方法の区分

電子帳簿の保存方法は、以下の3つの区分に分けられています。

  1. 電子帳簿保存(電子的に作成した帳簿・書類をデータのまま保存)
  2. スキャナ保存(紙で受領・作成した書類を画像データで保存)
  3. 電子取引データ保存(電子的に授受した取引情報をデータで保存)

このデータの保存についてもう少し詳しく説明します。

電子取引データの保存要件

電子取引のデータは、取引情報を電子データで、かつ電子帳簿保存法の要件に従って保存する必要があります。
単にPDFファイルをサーバーなどに保存するだけでは、民法や電子署名法上で有効と取り扱えても、電子帳簿保存法の要件を満たさず、税務上のリスクが存在するのです。保存要件は以下のとおりです。
出典:電子帳簿保存法が改正されました(国税庁)

電子取引の保存要件

真実性の要件
  • タイムスタンプが付された後、取引情報の授受を行う
  • 取引情報の授受後、速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付すとともに、保存を行う者又は監督者に関する情報を確認できるようにしておく
  • 記録事項の訂正・削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認できるシステム又は記録事項の訂正・削除を行うことができないシステムで取引情報の授受及び保存を行う
  • 正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規定を定め、その規定に沿った運用を行う
可視性の要件
  • 保存場所に、電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと
  • 電子計算機処理システムの概要書を備え付けること
  • 検索機能を確保すること
なお、検索機能とは以下を指します。

出典:電子帳簿保存法一問一答(国税庁)

電子帳簿の検索要件
  • 取引年月日、勘定科目、取引金額その他のその帳簿の種類に応じた主要な記録項目により検索できること
    改正後、記録項目は取引年月日、取引金額、取引先に限定
  • 日付又は金額の範囲指定により検索できること
  • 二つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること
ただし、以下の場合は不要
  • 保存義務者がダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には②③が不要
  • 保存義務者の基準期間における売上高が1,000万円以下の事業者については、すべての検索機能の確保の要件が不要

電子帳簿保存法に対応するには

どこまで対応するかを見極める

電子帳簿保存法への対応は2023年12月が期限ですが、2023年10月に導入される「インボイス制度」についても考慮に入れなければなりません。従って、どの企業も2023年9月までに、以下のいずれかの対応を実施する必要があります。

  • 電子帳簿保存法・インボイス制度の要件を満たす、最低限の対応をする
  • 電子帳簿保存法・インボイス制度対応の要件を満たし、かつ関連する他の業務を効率化する
  • 電子帳簿保存法・インボイス制度の対応は実施しない

インボイス制度についての詳細の案内は、特集インボイス制度(国税庁) をご覧ください。
電子取引はほとんどの企業が何らかの形で実施していますので、①か②の対応が必要となってくると思います。

会計システムや経費精算システムの導入を検討する

上記で挙げた①を満たすためには、電子帳簿保存法に対応した会計システムや経費精算システムの導入をおすすめします。その際、一つ注意いただきたい点があります。

システムの導入の注意点

caution

これらのシステムやツール、クラウドサービスを探す中で、「文書管理」や「タイムスタンプ」、「スキャナ保存」などの機能が挙がってきます。電子帳簿保存法に対応する法的な要件は厳密に定められていますので、キーワードに惑わされることなく、機能や要件を見極めることが大切です。
以上が「電子帳簿保存法に対応するための最低限の対応」となります。

取引関連の業務を更に効率化しよう

すでに電子帳簿保存法対応のシステムやクラウドサービスの導入を完了し、業務にも慣れた企業様は、業務の効率化やメリットを感じていらっしゃるのではないかと思います。 そこで、②で挙げたように電子帳簿保存法やインボイスに対応したシステムを導入するだけでなく、取引関連の書類全般についてもペーパーレス化やワークフロー化を進め、業務の効率化を検討してみてはいかがでしょうか。

業務のペーパーレス化については、以下の記事もご覧ください。

業務フローをペーパーレス化する

電子帳簿保存法対応の書類の中には、契約書や見積書、発注書も挙げられます。これらの書類は社内承認を経て発行されることが多いため、承認フローをペーパーレス化すればさらに業務の効率化が期待できます。

例えば外部企業と取引を締結するためには社内で稟議を通し、許可を取得して初めて契約書のやりとりが行えます。
このプロセスの中で稟議のような社内承認が紙で行われている場合、
  • 関係各所への書類提出、ハンコリレーで時間を要する
  • 起案内容を紙からPDF化を行うなどのデジタルへの変換作業が発生してしまう
  • 稟議の進行状況が可視化されず、時には対応漏れが発生し取引自体が遅延してしまう
などのデメリットが発生します。

企業によっては月に数百件と稟議が発生するため、
承認フローをペーパーレス化して業務効率化を行うインパクトは
大きいのではないでしょうか

実際に稟議を始め紙による業務フローを電子化することで、年間1,600時間の業務削減へとつなげた活用事例もありますので、よろしければご参考にしてください。

ファイルから紙を探すなどの手間削減につながる

稟議などが電子化される副次的なメリットとして、過去のデータ検索が容易になることが挙げられます。
紙で運用されている企業様では例えば過去の稟議内容を確認したいと思った際、書面の保管されたキャビネットや倉庫からファイリングされた書類を探して、と内容の探索に時間がかかってしまいます。
一方、上記がワークフローにより電子的に行われる場合、キーワードや申請者のアドレス、日付などの条件でデータを検索でき、容易に過去の内容の確認が行えます。

Gluegent Flowならさらに検索工数の削減に

申請・承認者のアドレスに加え、決裁の有無や稟議・業務報告・人事などのカテゴリ別で検索を行えるため、検索工数の削減に寄与します。
また、社内の申請をワークフロー化するということは、適切な担当者の許可を得てプロセスを進めることになり、結果的に内部統制の強化にも寄与します。

内部統制への対応メリットやワークフローが活躍しやすいポイントについて、以下のページでまとめていますので、よろしければご覧ください。

電子帳簿保存法に対応して業務効率化につなげましょう

今回は電子帳簿保存法の内容と対応のポイントを中心にお伝えしました。
法改正に伴い、電子書類のやり取りが増えることは容易に想像できます。そして電子的な書類のやり取りに付随し、外部に書類を提出する前の社内プロセスもあわせてワークフロー化することで全社的な業務効率化につなげられるため、電子帳簿保存法対応とセットで考えてみてはいかがでしょうか。